アラサーで始めた鉄道模型

「金のかかる道楽はやめておけ」父が私にのこした教訓である。

おかげで、私は趣味にお金をかけない、良く言えば倹約家。悪く言えばケチな人間として20代を過ごした。

ホラー映画に傾倒した頃も、劇場で見る際は必ず前売り券を購入し、もちろんポップコーンもジュースも買わなかった。DVDレンタルは旧作のみで購入の際はレンタル落ちを狙い撃ち。

とにかく、趣味はお金を使わずに楽しむ主義を貫いていた。

そんな私が、幼い頃からずっと憧れていた趣味がある。

それは、鉄道模型。

鉄道模型は、お金のかかる大人の道楽である。場合によっては一財産食い潰すことさえ可能な恐ろしい道楽だといえる。

父の教訓を守り、私は鉄道模型には手を出さずに過ごしていた。

しかし、30歳を過ぎたある日、私は唐突にそれを手に入れてしまったのである。

それは、誕生日プレゼントとして私の手元に舞い込んできた。

かわいらしい包装紙とリボンに包まれていた、ブルートレイン富士。

私が幼い頃から憧れ続けていた寝台特急車。

ちなみに贈ってくれたのは今でも付き合いが続いている恋人からである。一度、私が泥酔して語ったブルートレインへの憧れや、その鉄道模型への欲望を覚えていたらしい。

それから約3年。私の鉄道模型はイメージ通り金のかかる道楽だったかというと、まさにその通りで、父の教訓に反する形で毎月そこそこの金額を鉄道模型に費やしている。

もちろん、もういい年なので生活が破綻するほどは使わないが、それでも給料の10%程度は毎月使っている。

20代を我慢しつづけたのだから、少々はいいだろうと自分を正当化する日々である。